(2024年1月16日更新)
日本の春を告げる花といえば、まず最初に挙がるのが桜。3~4月に咲き誇るソメイヨシノの印象が強いが、さまざまな種類の桜があることをご存知だろうか。中でも1~3月に見頃となる「早咲き桜」は、ひと足先に春を楽しめると人気を集めている。
その早咲き桜にもまた、種類がある。下向きに咲く桜や濃い色になる桜など色や形の特徴はさまざま。ここでは、早咲き桜と呼ばれる桜の中でも有名な種類と、例年の見頃時期、全国の名所を紹介しよう。
早咲き桜とは?ソメイヨシノよりも早く開花する桜の総称
早咲き桜とは、日本で最もメジャーな桜であるソメイヨシノと比べて早い時期に咲く桜の総称。ソメイヨシノが例年3月上旬(九州)~4月下旬(北海道)に開花・見頃を迎えるのに対し、早咲き桜と呼ばれる種類には1~3月に見頃を迎えるものが多い。
早咲き桜としてよく知られるものとしては、河津桜、カンヒザクラ(寒緋桜)、あたみ桜(静岡県熱海市)、寒桜などがある。
カワヅザクラ(河津桜)は伊豆の早咲き桜として人気
「河津桜(カワヅザクラ)」は、静岡県の河津町で発見された早咲きの桜。沖縄などを中心に咲くカンヒザクラ系と、早咲きオオシマザクラ系の自然交配種と考えられており、例年1月下旬になると花が咲き始める。さらに、3月上旬までの約1カ月間という長さで咲き続けるのも特徴のひとつだ。
一般的な桜の品種であるソメイヨシノに比べ、河津桜は大輪で、濃いピンク色になる。一番の見頃といわれているのは、満開になる前の6~8分咲きで、河津町での例年の見頃は2月中旬から3月上旬頃。
河津桜が見られる名所
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河津川
(静岡県賀茂郡河津町)
例年の見頃:2月上旬~2月下旬
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下賀茂温泉
(静岡県賀茂郡南伊豆町)
例年の見頃:2月上旬~3月上旬
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晴明神社
(京都府京都市上京区)
例年の見頃:3月上旬~4月上旬
カンヒザクラ(寒緋桜)は沖縄で開花観測に使われる早咲き桜
「カンヒザクラ(寒緋桜)」は、ヒカンザクラ(緋寒桜)や、タイワンヒザクラ(台湾緋桜)とも呼ばれ、紫にも近い濃紅色で、中輪の花が特徴的な品種。花の咲き方は下向きで、花びらは散らずに、萼(がく)の付いた大きな花ごと落下するのも特徴的だ。
国外では中国南部や台湾に分布する桜で、国内では沖縄県で気温の関係で育てるのが難しいソメイヨシノに代わり、桜の開花の観測に使われている。有名な桜の品種として知られるエドヒガンは、ヒガンザクラ(彼岸桜)とも呼ばれ、名前は似ているが異なる種類の桜だ。
開花時期も早く、東京では3月中旬から、暖かい沖縄では例年1月中旬から下旬にかけて開花し、毎年1月下旬から2月中旬が見頃となる。沖縄県内では世界遺産・
今帰仁城跡
や、
八重瀬公園
などがカンヒザクラの名所として知られている。また、神奈川県の
県立三ツ池公園
など、首都圏をはじめ、本州でもカンヒザクラを見ることができる。
カンヒザクラが見られる名所
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名護城公園
(沖縄県名護市)
例年の見頃:1月下旬~2月上旬
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県立三ツ池公園
(神奈川県横浜市鶴見区)
例年の見頃:2月中旬~4月中旬
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今帰仁城跡
(沖縄県国頭郡今帰仁村)
例年の見頃:1月下旬~2月中旬
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八重瀬公園
(沖縄県島尻郡八重瀬町)
例年の見頃:1月下旬~2月上旬
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淀水路
(京都府京都市伏見区)
例年の見頃:2月中旬~3月下旬
カンザクラ(寒桜)はカンヒザクラとは別の種類の早咲き桜
「カンザクラ(寒桜)」は、カンヒザクラとヤマザクラの雑種と推定されている桜。名前は似ているが、種類は異なる。花は淡紅で一重咲、大きさは中輪。東京での開花時期は例年3月上旬頃だが、名前のとおり、場所によっては1~2月に咲く早咲きの桜だ。
寒い時期に咲く桜が「寒桜」と呼ばれることや、沖縄などで咲く「カンヒザクラ」、名前の似ている「フユザクラ」と混同されることも少なくないが、品種としての寒桜は個別のもの。寒桜の名前を含む桜にはほかにも「大寒桜」や「修善寺寒桜」があるが、これらはカンヒザクラとほかの種の交雑種だ。なお、熱海市の早咲き桜「あたみ桜」は、カンヒザクラとヤマザクラの雑種と見られ、品種としては寒桜の一系統とされる。
寒桜が見られる名所としては、都内では新宿御苑や上野公園がある。
寒桜が見られる名所
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新宿御苑
(東京都新宿区)
例年の見頃:2月中旬~4月下旬
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上野恩賜公園
(東京都台東区)
例年の見頃:3月下旬~4月上旬
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平野神社
(京都府京都市北区)
例年の見頃:3月中旬~4月下旬
アタミザクラ(あたみ桜)は1月から開花し開花期間も長い
「あたみ桜」は、その名のとおり、熱海市を中心に栽培されている早咲きの桜。「熱海桜」と漢字で表記されることもあるが、熱海市では「あたみ桜」としている。淡紅色の花が下向きに咲く桜で、1871年(明治4年)頃、イタリア人によってレモン、ナツメヤシとともに熱海にもたらされたインド原産の桜といわれている。
例年1月から3月にかけて見頃を迎え、静岡県内で同じく早咲きの桜として知られる河津桜よりも開花が早く、日本で最も早咲きの桜ともいわれる。また、ひとつの枝で早く開花する花芽と、その後開花する花芽とが二段構えで花を咲かせることから、開花期間が1カ月以上と長いのも特徴だ。
熱海市の木に指定されており、1月頃から市内各所で桜を楽しめる。約60本のあたみ桜が植えられた糸川遊歩道では、「
あたみ桜糸川桜まつり
」も行われる。
あたみ桜が見られる名所
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糸川遊歩道
(静岡県熱海市)
例年の見頃:1月中旬~2月上旬
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